産婦人科医師のための開業支援
診療所の開業には内科、在宅診療、透析、皮膚科、耳鼻科などなど診療科はさまざまです。
その中で有床での診療所は内科、産婦人科など診療科は少ないですが、あります。
そして、病気ではないが、入院が発生するのは産婦人科、いわゆるお産での入院しかないといっていいと思います。
つまり、産婦人科の開業準備はその他の診療科の開業とは少し違った目線から準備が必要ということです。
具体的なお話を申しますと、
一般的な開業の準備は土地の選定、事業計画の策定、銀行の融資交渉、設計施工、各種届出、スタッフの採用、機器・備品など準備・搬入、オープンハウスなど一連の作業です。
この中で産婦人科の場合、とりわけ注意をしなければならないことが3つ程がごいます。まず、開業地をどこにするか、銀行融資、設計施工です。
1.開業地をどこにするか?
ポイントは
- 診療圏エリア内の届出出生数と競合する産婦人科の数をしっかり分析することです。
何故かと申しますと、産婦人科は高額な投資が絡むため月々の借金偏在を考えますと可能であれば開業1年目から里帰り出産の妊婦さんからでもとりたいところです。
そこで出生数の規模が小さかったり、競合の産婦人科が多ければ分娩数の上りは鈍くなりますので経営に差し障りが出てきます。 - 搬送の場合の受け入れが可能な病院がエリア内、もしくは県内にある程度あるかどうかです。
これはまさに事故を未然に防ぐために必要です。
開業医院の場合、資金が豊富になった状況であれば耐えられますが、事故を起こすと分娩数が限りなくゼロに近くなりますので、資金が豊富でないと倒産する可能性が出てきます。
そして、事故が起こった時の対応も重要ですが、これについてはここではお話をしません。 - アルバイトの医師が呼べる場所かどうか
これは医院を長く続けるためには院長先生1人でやり続けるのは限界があります。
アルバイトの医師を呼ぶ場合通勤距離も一つの重要な要素になります。
ただし、環境で魅力を持たせるのか、アルバイト料を高額にして魅力を持たせるのか、同門の先輩、後輩、同期の医師を人間関係で呼ぶのか、などさまざまですので、いちがいには言えませんが、大切な要素です。 - 土地のサイズが医師の皆さんが健闘している産婦人科の建物を建てるだけのものかどうか
ベットを何床持つか、産婦さんの食事をする場所としてレストランをつくるのか、多目ホールなど必要最低限に必要なお部屋以外のものをどのくらいのサイズで作るのか
などを決定すれば必要な延べ床面積はおのずと出てきます。
建蔽率、容積率、土地の種類(商業地域なのか、住宅地域なのか、など)などを確認していただく必要があります。
2.銀行の融資
私が産婦人科の開業のお手伝いを毎年継続してやれせて頂いている中で融資額は4億~10億くらいまでさまざまでした。
ただし、このように融資金額に差が出たのには様々な要因がございます。
ポイントは
- 自己資金、資産を持っているか
- 後継になる、もしくは後継になるかもしれないお子さん、もしくはお身内がいるか
- 事業性があるか、これは地域のニーズがあるか(分娩が多く取れて採算が合うのか)
- 事業を始められる医師の人柄
ここで融資する銀行の立場からお話をしますと、銀行の担当者は融資実績を上げたいため可能なら融資をしたいのです。
ただし、上記の項目が中途半端になっていると、銀行内で融資の稟議を上げても却下されます。
つまり、融資が焦げ付く可能性があると上司から判断されるわけです。
そのような経過から融資が下りる医師もいれば断られる医師もいるのです。
ただし、これは一般的なお話です。
3.設計施工
これも私の経験から申しますと、建物で2億台~6億円を超えているものまでありました。
まずは銀行融資がどれだけおりるのかによっておのずと建築予算が変わりますが、建物はその地域のランドマークと認識していただいた上で取り掛かって頂きたいです。
設計施工で大切なことはまず設計施工の費用は適正価格か、設計施工に携わっている業者が産婦人科の経験があるかということが大切です。
ポイントは
- 計施工の費用は適正価格かどうかの検討。
建物は良くしようと思うと際限なくお金がかかります。建物にかける予算を厳守すること(必ず必要なことと、そうでもないことを考えるとこと)が必要です。
事前に設計施工業者へ施工費用を厳守されることが必要です。 - 設計施工に携わっている業者が産婦人科の経験があるか
これは大事です。前述でも申しましたように産婦人科は女性(産婦さん)が相手ですので快適さや綺麗さが求められます。
女性は男性とは違う切り口でみますので、女性好みの建物を建てる必要があるかもしれません。
今まではホテルのような、とか、ログハウスのようなとか、メルヘンチックとか、かわいらしい感じとか、シックな黒を基調としたとか、いろいろでした。
そして、このようなこだわりがある特殊な建物を作る以上経験者に任せないと後でトラブルが起きることが多いです。
そして、設計施工会社によっては仕事が欲しいばかりに経験がないのに経験があると嘘をつく悪質な業者もいます。
詳しくは言えませんが、大手の会社でもこのような事例がありますので、会社の大きい小さいだけでは判断はできません。
設計施工業者選びは大切です。
あとがき
今回は開業の準備についての最低限の内容をご説明いたしました。
ですが、上記の3つのポイントを押さえておけば産婦人科の開業準備期間の半分以上の工程は終了したことと同じです。
従って開業準備のすべてではありませんが、大変肝になる部分をご説明したつもりでおります。
今後開業をお考えになられている先生方が良い形で開業を迎えられることを切にお祈り申し上げます。
弊社で行った施工実例
開業までの流れ
地域の選定は、開業にあたって最も重要なポイントです。その場所に来院してくださる患者さんがどのくらいいるか、今後永続的に利益を出し続けられるかどうかを先生のご意向とすり合わせながら検討していきます。
土地を取得して病院を建てる場合も、ビルを借りてクリニックを開業する場合も、開業地が決定したら、土地の購入およびテナント契約に必要な申請書類の作成、関係機関への開業届出書類の作成を代行いたします。
1. 開業意思決定
先生の所属する大学や病院など周囲の状況を確認して、開業時期の確定やその後のスケジュールをご相談させていただきます。
2. 開業地・開業形態選定
戸建て開業、テナント開業、継承開業など様々な形態から、先生とご相談させていただきながら進めてまいります。地域の選定は、開業にあたって最も重要なポイントです。その場所に来院してくださる患者さんがどのくらいいるか、今後永続的に利益を出し続けられるかどうかを先生のご意向とすり合わせながら検討していきます。
土地を取得して病院を建てる場合も、ビルを借りてクリニックを開業する場合も、開業地が決定したら、土地の購入およびテナント契約に必要な申請書類の作成、関係機関への開業届出書類の作成を代行いたします。
物件選びのポイント
1)開業物件の種類
テナント物件(賃貸物件)
築年数、修繕計画、耐震建築などを確認しましょう。また、賃貸物件の中には違法建築物もありますので不動産によく確認してください。MRIやCT、レントゲンを設置する場合は電力や床の加重基準の確認も必要です。
建て貸し物件
希望に合わせて建てることができるため、内装工事のコスト軽減が見込めます。また、長期の定期借家契約が多くなります。注意点は他の開業物件と違い、開業まで時間がかかること。工事の進捗によっては開業時期が大幅に遅れることもありますので、工事日程をよく確認しましょう。なお、診療科目によっては開業する季節によって売上が大きく変動します。また、賃貸料が通常の賃貸より高額になることが多々ありますので費用対効果を検討しながら選ぶことが重要となります。
継承物件
継承物件は現院長の他に建物のオーナーから承認を取り付ける必要があります。その際家賃など交渉をする必要がでてその場合慎重に交渉しましょう。交渉の中で残債の負担や営業権の譲渡費用など求められる場合がありますので内装や医療機器、営業権等の適正を算出するために専門家にご相談されることをお勧めします。また譲渡契約を結ぶことも大切です。事前に保健所、保険局への相談も必須。閉院と開院の日付の問題や医師の勤務についてルールがあります。継承物件の良いところは患者がついていることで開業当初から営業収入が見込めることです。
居抜き物件
居抜き物件は時折出てまいります。この場合事前に診療圏調査や事業性診断を十分に行った上で賃料などの交渉を行いましょう。継承物件と違い、残債の負担営業権の譲渡費用の負担を求められることはまずないです。ただし、一からの開業ですので内装・空調などの手直し、修理が必要になりますので、物件の持ち主との話し合いも必要になります。
2)賃貸契約
普通賃貸契約
一般的な契約です。貸主と借主のどちらかといえば借主が有利な契約になります。退去時や退去を求められた際に借主が法律的に守られた契約です。
定期借家契約
一般的な契約です。貸主と借主のどちらかといえば貸主が有利な契約になります。契約期間中は借り続ける必要があるほか、契約更新時に契約延長ができない場合もあります。十分確認してご契約ください。
3. 診療圏調査・事業性診断
希望開業地域より開業候補地が決まりましたらマーケティングを調査いたします。
現在の少子高齢化人口減少社会においては現在の診療圏分析のみならず、5~10年後にどのくらいの市場規模が存在するのかを推定し(候補地の将来に渡った事業性診断)、それを一つの判断基準にすることも大切です。これについては弊社独自のシステムで検証をさせて頂き、ご説明をさせて頂きます。
4. 資金調達サポート(事業計画策定など)
自己資金とは別に、金融機関からの借り入れが必要になる先生がほとんどではないかと思います。
弊社では開業に当たっての経営計画を作成し、借入額や返済のための資金繰りシミュレーションを作成いたします。資金調達の目処が立ったら、関係金融機関への交渉や借入に必要な事業計画書の作成を行い、無理のない範囲での返済プランを立てます。
また、弊社と取引のある金融機関が多数ございますので、先生方のお意向に沿った形でのご融資をいたします。
5. 設計・建築サポート
物件が決まったら、内装・外装工事のための設計と建築のサポートを行います。患者動線、スタッフ動線、医療機器を考慮に入れ、設計図面を作成するに当たっての打ち合わせを行い
ます。そして経営視点からのアドバイスを行い、着工から竣工までの一連の段取りを組ませていただきます。
また、院長先生のご意向に応じて設計・建築費用を試算し、ご予算に合わせて適切な業者を選定いたします。
6. 広告プラン作成
宣伝広告に関しては多少の規制が入る場合があります。しかし、現在は広告宣伝は当たり前になっております。広告宣伝の大小はあってもやったほうが良いと考えます。
先生方のお考えに合わせて広告宣伝の種類、費用などご提案をさせて頂きたいと思います。
7. 医療機器選定
各科目において必要な機器が違いますのでそれぞれにあった最適な機器の選定をし、事業計画に見合った価格でのご提案をするとともに、弊社では中古機器のご提案も出来ますので先生方のご要望に応じた機器・費用のプランニングをさせて頂きます。
また、システムネットワークや設計士を交えて機器電源等の図面構築などもご提案させていただきます。
8. スタッフ募集作成
弊社ではスタッフ募集、面接の日程調整、面接での立会いなど採用に関わるあらゆる作業をお手伝いいたします。また、もしスタッフがどうしても不足した場合弊社では医師・臨床検査技師、超音波検査技師・看護師など医療関係の有資格者全般の就職支援事業を行っております。いずれも弊社のスタッフが直接お会いし、キャリアカウンセリングを行った方のみをご紹介させていただきます。
ご紹介の際には必要とされる人材条件をヒアリングさせていただき、ふさわしい方がいらっしゃいましたら院長先生と弊社スタッフを含めました三者面談を実施しいたします。双方の条件がマッチしましたら受け入れ決定となります。
9. 医薬品の選定
院内・院外で使用される医薬品リスト作成のお手伝いをさせていただきます。
見積交渉もさせて頂きます。
10. 消耗品準備
各種消耗品をご提案させていただきます。見積交渉もさせて頂きます。
11. 職員研修
開業前の詳細スケジュールを作成し、機器・医薬品・電子カルテのデモなどの勉強会やシミュレーションを実施し、スムーズな開院のお手伝いをいたします。
12. 開業の挨拶回り
近隣の住民の方々は何かの形で患者になりうる方々です。また、近隣の病院、診療所はご近所さんのいうことになります。これは大変大切な行事ですので失礼のない開業前の挨拶回りをスケジューリングし、ご提案致します。
13. 集客
過去の開業では集客を意識しなくてもある程度患者様が来院する時代でした。
しかし、少子高齢化人口減少社会の今日では集客は開業のための大きなポイントとなります。綿密な宣伝計画を立て集客プランを立て実施します。
14. 開設届出・申請
開設届、保険医療機関指定申請など各種開設に関わる届出書類の作成のお手伝いをし、申請の準備をいたします。
主な手続き先リスト
1.保健所(開設届など)
2.関東信越厚生局(保険医療機関指定申請書)
3.税務署(事業所設置届、青色専従者など…税理士または公認会計士)
4.都税事務所(事業所設置届、青色専従者など…税理士または公認会計士)
5.労働基準監督署(労働保険関係成立届、労働保険概算保険料申告書)
6.ハローワーク(雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届)
7.年金事務所(個人事業主の場合、労働者が5人以上になると社会保険の加入適応対象になります。健康保険(協会けんぽ)を医師国保に変更する場合は、医師国民健康保険に相談しましょう。)
8.医師会(医師会加入届)
9.所轄消防署(消防計画作成届など)
15. 内覧会
開院直前の内覧会は近隣住民の皆さん(=患者様)には開院前にクリニックを知っていただくことは患者様になりうる皆さんとの初めての接触となります。近隣の皆様によりよくクリニックを知って頂いて応援を頂けるようにお手伝いをさせて頂きます。
16. 開業後のコンサルティング
増患対策や運営面など、開業後も幅広い問い合わせに対してサポートいたします。