【2023年最新版】
今後の出生数減を睨んだ医師開業戦略

医師にとって、将来の進路として勤務医、開業が大きな2つの選択肢でしょう。そして自身で開業をすることリスクをはらんだ大きな挑戦と言えます。

今回は人口減少、出生数減少の中で苦戦するであろう産婦人科(特に産科、分娩施設)の開業にスポットを当てることとします。

 ここでは出生数と分娩施設数のデータを説明すると共に、厳しい環境の中で産科開業を成功させるためのポイント、成功の秘訣、開業後の戦略について解説をします。

産婦人科開業のためのデータ考察

  • 現在、5年後、10年後の採算玄関医療機関数データを考察すると今後産婦人科開業は大変厳しいものになる
  • 今後産婦人科で開業する医師は開業の事業計画、収支計画、及び開業後の経営戦略が求められる

採算限界医療機関数とはその県内で採算がとれる医療機関数のことです。
採算可能施設は年間300名の分娩数で換算しています。
出生数の減少速度から検討すると採算ラインとして5院以内の場合レッドゾーンとしました。

ただし、開業時もしくは経営時過剰投資がある場合は損益分岐点が高くなりますので300名では採算が取れない可能性があります。

赤字の県は採算が取れる医療機関数を超えている、もしくは採算限界に近づいている県です。
2000年から2020年における出生数の減少率は年間平均で1.57%です。
2027,2032年の減少幅はこれに基づいています。

(出所)厚生労働省令和2年人口動態統計
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei20/index.html

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp

キャノングローバル戦略研究所
https://cigs.canon/

【医師向け】病院・クリニック開業に向けた準備

病院やクリニックの開業は、医師にとって重要な一歩であり、慎重な計画と準備が必要です。
しっかりとした計画を立てることで、開業後の安定した経営を実現できます。
ここからは 病院・クリニックの開業を成功させるためのポイントをご紹介します。

【医師向け】開業に向けた綿密な計画

最初に開業の計画を具体化する、抽象的な計画のままで計画を進めない
3つの計画を具体化すること

  • 開業費用の精査
  • 事業収支計画
  • 従業員採用計画

開業費用の使い過ぎは開業後の経営に影響します。スタートは出来る限りローコストでの開業を目指しましょう。

年間3億円の売上があっても、借金が6億円あったらどうでしょうか?年間返済金額は6000万円を越えるでしょう。人件費は9000万円、リース料、運転資金、生活費諸々を考えると3億円の売上をあげても残る利益が少ないことがお分かりいただけると思います。

要するに何で買う・揃えるのではなく、これは買うがこれは開業後に購入しようなどメリハリのある資金費用の使い方を検討してみることも必要でしょう。

開業する開業地の市場がどのくらいの収益を生み出せるのか冷静かつ客観的に分析しましょう。

事業の収支とは売上と支出を考えて利益をどのくらいに見積もるかということです。
まずはご検討の市場でどれだけの収入を上げることが出来るのか考えてください。
その上で売上に対していくらの支出が出来るのかを計画することが大切です。

開業後の一番大きな支払いの一つは従業員の人件費です。

人件費は勤務ローテーションを組む上で正社員の方がやりやすいことも確かですがその分労働債権が増えていきますし、月々の給与の支払いも増えます。良いバランスで正社員とパートをいれて収支のバランスを取ることをおすすめします。わからない場合は一人で悩まず専門家に聞いてみることも方法の一つです。

【医師向け】開業費用をかしこく使う

病院、医院の開業には費用がかかります。
今回は産婦人科の開業費用に焦点を当てます。
費用を大きく分けると、土地、建物(もしくは居抜き物件)、医療機器、運転資金です。
産科(分娩施設)の場合病床が必要です。そのため通常の無床クリニックよりも床面積が広いクリニックとなります。

  • 土地は良い市場を探し、検討をつけたところで土地探しに入ることと思います。実際に目当ての土地が見つかったら価格交渉になると思います。その際はその土地の路線価を事前に確認してください。法外な土地の価格を言われても土地の基準価格を知らなければ言い値で購入する羽目になります。
  • 建物は医療物件を建てた経験のある設計士、建築業者へ頼むことが一般的と言われています。しかしながら医療物件に精通しているといわれる設計士、建築業者に依頼すると割高になります。例えば病床15床でクリニックを建てると簡単に3憶、4億といわれることも多々あります。では賢くより安価に医療物件を建てるにはまず大手、メジャーな業者に限らず中小も含めて複数の会社と話をすることです。極端な言い方をすると簡単に言えば建物の写真を見せてこんな漢字の建物を作って欲しいと依頼しても良いのです。可能なら設計士と建築業者が一体になっている方がより安価になります。例えば設計士を外注すればコストがかなり上がります。
  • 居抜き物件は用心が必要です。無償クリニックであれば大したことはありませんが、産科施設の場合ほとんど2階以上のフロアーを有しておりますので老朽化している等建物内が傷んでいるとコストは膨大なものになります。例えば無床クリニックの場合せいぜい30坪~50坪の床面積なので空調の配管も大して長い管を通してないですが産科の場合1階2階と空調を張り巡らしているので配管の傷みが激しいと数mの配管を替えることになり数千万のコストになる場合もあります。また購入もしくは賃貸費用も収入に見合っているか検討することが大切です。
  • 医療機器はよくよく精査することが大切です。わからずに購入をして気が付いてみるといらないものを買わされていたり、開業した後に膨大な医療機器リースを見て驚いたり。まずは高度精密医療機器、産科なら超音波診断装置、分娩監視装置、分娩台、内診台、手術台、麻酔器、無影灯などでしょうか。例えばクリニックを2診でやる場合最初から2診の設備を揃える必要はないでしょう、開業後患者が増えてから購入する選択もあるのではないでしょうか。本当に開業時から必要かどうか、もしくはこの医療機械がそもそも必要かなどを精査するが肝心です。そしてリースをお考えの場合一通り医療機器のラインナップが揃ったらリース料を計算して開業後本当に払っていけるのか十分に検討することも大切なことです。
  • 運転資金は一般的に3~6ケ月分のクリニックの運営資金です。産科の場合土地の費用、借金返済、リース料、人件費など毎月大きなお金が出ていきますのでクリニックを運営するための資金ですので潤沢に持ちたいものです。現実的には3,000万円では心許ないので5,000万円くらいは自己資金として用意できれば上出来だと思われます。

安全で確実な開業をしましょう

今後少子高齢化によりどの診療科で開業をしても大変な時代です。しかしながらやるべきことをやり、やってはいけないことをやらなければ開業の成功は意外と容易なことです。

  • 開業地選定:きちんとリサーチして適切な開業地選びをすること。
          開業したい場所と開業で成功する場所は違うことが多いです。
  • 開業費用:予想収入の限界まで使って開業しないこと。

この2つを守れば成功します。