先日埼玉県緑区で建設予定としていた順天堂大の新病院計画の中止が2024年11月29日に発表されました。これには埼玉県としては非常に残念に思っていることでしょう。
順天堂大学医学部附属埼玉国際先進医療センター(仮称)開設計画
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0703/iryoushinigikai/houkoku.html
https://www.juntendo.ac.jp/news/21054.html
次に、医業支出の面から検証してみましょう。
順天堂大学側が出したコメントですべてがわかります。ここで読み解きます。
「学内を挙げて検討したが、建設費の高騰、医療機関を取り巻く状況変化があって云々」
これを読み解くと、「学内を挙げて検討したが、建設費の高騰、少子高齢化・将来的な人口減少によって今後将来に渡って医業収益を出し続けることが困難なため、」
ということを暗に言っているということです。この中の「建設費の高騰」のくだりで総事業費が当初計画の834億円から2186億円と、約2・6倍に増加したとのことです。
2,000億円を金利1.0% 50年ローンで金融機関から融資を受けたとします。年間元金(利息も含めて)年間返済額約50億円となります。逆に800億円を金利1.0% 50年ローンで金融機関から融資を受けたとします。年間元金(利息も含めて)年間返済額約20億円となります。比較するとわかるように年間返済額が当初計画の倍以上になっています。これでは少子高齢化・将来的な人口減少を考えると金融機関も融資に難色を示すと思われます。ただし、真の意味で支出を削減する努力をした額が2186億円なのかはわかりませんが、無駄な支出、相見積もりの方法など改善が必要な部分もあったかもしれません。
つまり、新規での病院開業、医院開業ともに医業収益を上げることが必須です。そのためには医業支出を上回る医業収入を上げることですが、最大限医業支出を抑えることが利益を出すための大前提です。医業経営(病院経営、診療所経営)は医療収入を上げるとともに医療支出を抑えて利益を上げられる病院、診療所に経営変更することも大変重要です。
そこで病院、診療所の中で大きな支出になる医療機器等の医療設備と人件費について言及します。
働き方改革が医療現場にもたらすものとは?
まず一人の医療スタッフを労働量が制限されます。これは医療ケアの質を下げる可能性があります。つまり医療現場では能力が高い人材が多く徴用される傾向があります。すべての従業員が同じ能力があればよいですが、そうでない場合すべての従業員が同じ労働時間となることを考えると医療の質は下がってしまう可能性が予測できます。しかしながら能力のある医療スタッフへ負担が集中することを避けるという面では有効ですので、医療機関側からみるのと従業員側から見るのでは随分違うと思います。
ここで医業支出面から考察します。医療スタッフの労働時間が制限されるため基本的に従業員の頭数が必要となります。つまり今まで以上に従業員を雇用することとなり、従業員の社会保険料が増えること、非正規社員(パート社員)の雇用も増えることで人件費を増加することが考えられます。いずれにしても人件費コストは上昇することとなります。
例えば下記の医業支出の大きなものを考えてみます。
医療機器/医療備品コストをどう考えるか?
医療上必要であれば買うしかないという医療現場での理屈は理解できますが、そこにどこのメーカーの、どの製品の、いくらのものを買うのかという議論をする機会を持つことが大切です。つまりコスト意識を現場に持たせることです。これを根付かせないと医療現場の高コスト化による医療収支上の破綻は目に見えています。人口減少、少子高齢化が進む昨今の現状ではどんなに利益が出ている病院、診療所でも、新規の病院、診療所でも最終的にはコストカットを行わざるを得ません。病院経営者、診療所経営者の皆様はローコスト化について真剣に取り組むときです。
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